独立行政法人福祉医療機構 「長寿・子育て・障害者基金」助成事業

サッカーレッスンの中に発達障がい児(スペシャルキッズ)クラスを持つ私どものクラブでは子ども達がスポーツに触れ、楽しくコミュニケーションを取り合う場の充実を図りたく専門家の見学、コーチスタッフを交えた勉強会を重ねてまいりました。その集大成として、スペシャルキッズ指導者(主に初心者)のための指導マニュアルを作成いたしました。


スペシャルキッズ(発達障がい児)指導プログラム 概要

■はじめに

2003年4月、私は生まれ育った横浜で学童を母体としたアートフットボールチームを立ち上げました。自分が長年携わってきたサッカーのレッスンに参加する人々を募り、子ども達にスポーツの喜びや楽しさを伝え、できることであれば地域を代表できる強い選手を育てたいと願いながらのスタートでした。

幼稚園児から一般までいくつものクラスに沢山の人たちが集まる中にSくんという男の子がいました。年齢によって区切られたクラスにいるSくんは私にとってちょっと気になる存在でした。後日、彼は発達障がい児だと知らされたのですが、私は初めて耳にする言葉でした。いくつかの資料をみていくうちに新たな知識を得ることはできましたが、どう接することがよいのかは自分の中でまとまらないまま、自分なりの試行錯誤を繰り返すうちに気づくと数人の発達障がい児が集まってきたのです。思い切って彼らがもっとのびのびと自分を表現できるよう別のクラスを設けることを決意し、そのクラスを「スペシャルキッズレッスン」と名づけ、15人の子どもたちのストーリーが始まりました。

スペシャルキッズレッスンを設けたことによってレッスン内容に変化と充実が表れ、想像以上に興味も湧いてきました。しかし、しばらくすると様々な問題が私に圧し掛かってきました。
正直なところ、子どもたちの技術の進み具合に指導方法がついていけないということはありませんでしたが、ほとんどの場合が私の発達障がいに対する勉強不足や経験不足によるものでした。
確かに、これまで専門的に学んだことはないし、これからもあまりにもテーマが大きすぎて私の能力では十分な結論を導き出すほどの研究は出来ない気がしていました。それでも、ここに集まっている子ども達にスポーツの喜びや楽しさを味合わせてあげたいという気持ちは変わりませんでした。

 その頃、素人である私のレッスンによってでさえも、ご両親の期待や周囲の想像以上に集団行動ができるようになった子どもも見受けられるようになりました。先入観や固定観念を吹き飛ばした子どもも見受けられるようになりました。
素人でも工夫と思いがあれば子ども達にスポーツの喜びと楽しさを伝えることが可能だということを実感する回数が増えていました。でも、それと同時に何の裏
づけもない指導方法に不安を覚えることも多くなって行き、そんな思いを胸に週に一度のレッスンを繰り返していた私はふと同じような思いをしている人はほかにもいるのではないだろうかと考えるようになりました。そして、スペシャルキッズの専門家になることが目的ではなく、これまでの経験や必要最小限の知識を盛り込み、指導者のためのガイドブックをつくることができないかという思いが湧いてきたのです。

 そんな折、発達障がい児と診断されたすべての子どもが、自己決定を行い、自立した生活を営むことができるようにするために、療育を普及していくことを会の理念に据え活動している団体の存在を知ることができました。それが「ひまわりの会」(のちにNPO法人化)でした。代表である尾串氏に連絡をしてみたところ、お忙しい中、見も知らない私からのアプローチにいやな顔一つせずお力添えをいただけることになりました。幸い、尾串氏は私が取り組んでいる地域密着型のスポーツクラブの趣旨を理解して社会全体でサポートしてくことを目指してもおられ、大変心強い支えとなってくださいました。

 また、実際に意見交換など繰り返しながら専門家の方とプログラムを作成していく中、専門家の方にとっては基本中の基本であっても、私たちのようなスポーツの現場に立つ人間にはわかっていない知識がいっぱいありました。逆に専門家の方には思いつかないけれど、私たちだからこそやってきた指導方法もありました。それらを冊子・DVDとしてまとめることを提案したところ独立行政法人福祉医療機構のご援助をいただき実現する運びとなりました。
 
この取り組みが全ての子ども達の可能性と未来への希望を大きく広げてくれることを切に願います。
また、いくつもの難関を共に乗り越え、方法を見つけ出し、さまざまな形でご協力いただいたスタッフをはじめ、オフィスドリームの瀬尾氏のサポートには多大なる感謝をいたします。みなさん本当にありがとうございました。
                  
平成20年3月31日

NPO法人 FCUスポーツクラブ代表 清野 乙彦